苦み・渋み・甘みの化学
プーアル茶を飲むと、多くの人が最初の一口で覚えるのは苦み、続いて舌の表面がきゅっと締まる渋み、そしてしばらくすると喉に甘みが広がります。この三つの感覚は一続きの体験のように見えますが、実はそれぞれ違う成分から来ていて、働き方も違います。苦みと甘みは味覚ですが、渋みは触覚の一種なのです。
苦み:カフェインとエステル型カテキン
茶湯の主な苦みの源は二つのグループです。
- カフェイン:アルカロイドの一種で、味はクリーンでストレートな苦みです。熱湯にすばやく溶け、湯温が高いほど、浸す時間が長いほど多く溶け出します。含有量と生熟の違いはカフェインをご覧ください。
- エステル型カテキン:カテキンのうち「没食子酸エステル」を持つもので、EGCGやECGなどです。苦みも渋みも、エステルを持たないカテキン(EGC、EC)より強くなります。
両者は互いに作用し合い、カフェインとカテキンが結合すると苦みの感じ方が変わります。若い生茶の苦みがはっきりしているのは、まさにこの二つのグループがまだ多いからです。熟茶は渥堆を経て、古い生茶は長年の寝かせを経て、エステル型カテキンが大きく減るので、苦みも収まっていきます。カテキンの変化は茶ポリフェノールとカテキンをご覧ください。
渋み:「締めつけられる」触覚
渋みは舌で味わう味ではなく、口の中の表面の触覚です。茶ポリフェノールが唾液中のプロリンを多く含むタンパク質と結合して複合体をつくり、ときには沈殿して、口の中のなめらかな保護膜が減るため、乾いた、締まった、ざらついた感じがするのです。
渋みを生む主な成分は次のとおりです。
- エステル型カテキン:渋みがもっとも強く、もっとも鋭い。
- フラボノール配糖体:たとえばケルセチンやケンフェロールの配糖体で、含有量は少ないものの、きめ細かいビロードのような渋みをもたらします。
- 没食子酸などのフェノール酸:渋みの中に少し酸味があります。
ですから苦みと渋みはよく一緒に現れますが、別のものです。見分け方と淹れ方での対策は苦みと渋み:別々の二つのものをお読みください。
甘み:糖、アミノ酸、多糖
プーアル茶の甘みは砂糖水のようにストレートではなく、穏やかで、後半に浮かび上がってきます。その源は次のとおりです。
- 可溶性の糖:ショ糖、ブドウ糖、果糖など。含有量は多くありませんが、甘みの土台をつくっています。
- アミノ酸:テアニンはうま味とほのかな甘みを持ち、グリシンやアラニンは甘め寄りです。晒青毛茶はアミノ酸がよく残るので、若い生茶にはみずみずしい甘さがよくあります。詳しくはプーアル茶には何が含まれているかをご覧ください。
- 多糖とその結合物:熟茶では渥堆の中で一部の大きな分子が分解・再構成されます。近年の研究では、熟茶の茶湯から、ラムノース・ガラクトース・アラビノースなどから成る分子量約22.93 kDaの多糖結合物が分離され、テアブラウニンとともに熟茶の「まろやかでとろりとした」口当たりを形づくっていると考えられています。
熟茶を口に含んだときの甘くなめらかな感じやとろみは、主にこれらの糖類と大きな分子から来ています。古い生茶の甘みは、多くの場合、苦渋みが退いたことで甘みの成分が感じ取りやすくなったものです。
回甘:まだ定説のない現象
回甘はプーアル茶のもっとも魅力的なところの一つです。茶湯を飲み込んだ後、口の中や喉に甘みが広がります。その成因については今のところ統一された答えがなく、よくある説明はいくつかあります。
- 対比説:苦渋みの物質が口の中にとどまった後、唾液で薄められ、感覚が中立に戻るとき、脳がその変化を「甘み」として感じ取るというもの。
- 成分説:一部のフェノール類(没食子酸や特定のフラボノイドなど)が回甘の強さと関連しており、茶湯にこうした物質が多いほど回甘もはっきりするという研究があります。
- 生津説:渋みによって口の中に唾液が多く分泌され、口が潤って味わいが甘く変わるというもの。これは、お茶を味わうときに「生津(唾液がわく感覚)」と回甘がよく一緒に現れる理由でもあります。
これらの説は互いに排除し合うものではなく、一緒に働いている可能性があります。テイスティングでの表現の仕方は回甘と生津をご覧ください。
生と熟、新と旧の味わいの違い
| お茶 | 苦み | 渋み | 甘み | 主な理由 |
|---|---|---|---|---|
| 若い生茶 | はっきり | はっきり | みずみずしい甘さ | カフェインとエステル型カテキンが多く、アミノ酸も多い |
| 古い生茶 | 収まっている | きめ細かい | 甘くなめらか | エステル型カテキンが加水分解・酸化し、苦渋みが減る |
| 熟茶 | ごく軽い | ごく軽い | 甘くまろやか | 渥堆でカテキンが大量に変化し、多糖結合物とテアブラウニンがとろみとなめらかさをもたらす |
淹れ方で味わいを調整する
苦みと渋みは主にカフェインとエステル型カテキンから来ており、これらは高温・長時間でもっとも多く溶け出すので、淹れ方にはいくつかの方向があります。
- 注ぎ出しの時間を短くする:若い生茶は最初の数煎を素早く入れて素早く注ぎ切ると、甘みが先に出て、苦渋みが追いつきません。
- 茶葉の量を減らす:茶と水の比率をゆるめれば、苦渋みの濃さもそれにつれて薄くなります。茶葉の量と茶水比をご覧ください。
- 湯温を少し下げる:芽の多い若い生茶は、90°C前後の湯を使うとより柔らかくなります。湯温をご覧ください。
- 蒸らさない:注ぎ出したら蓋を開け、葉底が高温の中で抽出され続けないようにします。
苦すぎる・渋すぎるときの対策の全体は苦すぎ・渋すぎたときの対処法にあります。
よくある質問
プーアル茶の苦みは何から来ていますか? 主にカフェインとエステル型カテキン(EGCG、ECGなど)で、湯温が高いほど、長く浸すほど多く溶け出します。
渋みはどんな反応ですか? 茶ポリフェノールが唾液中のタンパク質と結合・沈殿し、口の中の潤いが減るため、乾いた締まった感じがします。味覚ではなく触覚の一種です。
回甘の原因は? 今のところ定説はありません。苦渋みが退いた後の対比効果、一部のフェノール類の働き、口の中の生津によって味わいが甘く変わることなどが挙げられ、同時に働いている可能性があります。
甘みはどこから来ていますか? 可溶性の糖やテアニンなどのアミノ酸から来ており、熟茶ではさらに多糖結合物が甘くまろやかな味わいととろみをもたらします。