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生茶の熟成の化学:酸化か、微生物か、酵素か

「プーアル茶は生きたお茶」という言葉をよく耳にします。生茶は餅茶に圧された後、乾燥した場所で一年ごとに変化していきます。水色は金色から赤へ、苦渋みは少しずつ収まり、香りは爽やかな香りから陳香へと進みます。では、変化させているのはいったい何なのでしょうか。研究者の答えは、原因は一つではなく、三つの力が条件に応じて代わる代わる主役を務めている、というものです。

三つの力

古いお茶に関する研究を振り返った近年の論文は、熟成を推し進めるものを三つに分類しています。

  1. 酵素によらない化学反応:もっとも主要なのはゆっくりとした自動酸化と、分子どうしの結合・重合・加水分解です。酵素も微生物も必要なく、酸素と水分と時間があれば進みます。
  2. 酵素の働き:茶葉そのものに残るポリフェノールオキシダーゼやペルオキシダーゼ、そして微生物が葉の表面に分泌する細胞外酵素です。
  3. 微生物の代謝:茶葉の表面にいる乾燥に強いカビや細菌が、条件が許すときにゆっくりと活動します。

どの力が優勢になるかは、茶葉がどれだけ「湿っているか」で決まります。

鍵となる数値:水分活性

茶葉の中の水が反応や微生物に利用できるかどうかを測るのが「水分活性」で、範囲は0〜1です。研究のまとめは次のとおりです。

  • 乾燥した状態で保存しているとき、乾燥茶葉の水分活性はふつう0.60以下です。このとき酵素の活性は大きく抑えられ、微生物の多くは休眠しており、熟成は主にごくゆっくりとした酵素によらない自動酸化と化学的な結合によって進みます。
  • 水分活性が0.60をやや上回ると、乾燥に強い保管中のカビの一部が活動を始め、酵素を分泌して変化に関わり、速度が少し上がります。
  • 一部のコウジカビは水分活性0.75以下でも生き残れるため、茶葉の表面の微生物は本当にいなくなるわけではなく、ただとても静かにしているのです。

これは保存環境の相対湿度が鍵になる理由でもあります。環境が湿っているほど茶葉は多くの水を吸い、水分活性が高くなり、酵素や微生物が活発になります。雲南の地方標準が保管の相対湿度の上限を70%としているのも、この理屈によるものです。数値はプーアル茶の保管の温度と湿度にまとめています。

残った酵素は働いているのか

働いていますが、限られています。プーアル茶の殺青は温度が比較的低く時間も短めで、さらに天日乾燥は機械乾燥のような高温にならないため、晒青毛茶にはわずかな酵素の活性が残ると一般に考えられています。これもプーアル茶が「保存に向く」製法上の基礎の一つです。ただし乾燥した保管条件のもとでは、これらの酵素の働きは水分に制限され、主にできたばかりの最初の数年や、環境がやや湿ったときに発揮されます。殺青と天日干しの詳細は殺青と揉捻をお読みください。

熟成の中で何が起きているか

カテキンが減り、形を変える:「没食子酸エステル」を持つカテキン(EGCG、ECGなど)はゆっくり加水分解され、没食子酸とエステルを持たないカテキンを放出します。同時に一部は酸化・重合します。そのため苦渋みは年々収まっていきます。詳しくは茶ポリフェノールとカテキンをご覧ください。

色素がテアブラウニンへ進む:製造工程で残ったわずかなテアフラビンやテアルビジンが、中継地点のようにゆっくり重合してテアブラウニンになり、水色は金色から橙赤色、赤褐色へと変わります。テアフラビン・テアルビジン・テアブラウニンをご覧ください。

新しい「老茶の目印」が現れる:研究によれば、テアニンがまず分解し、続いてカテキンと結合して、「N-エチル-2-ピロリジノン置換フラバノール」(EPSFと略されることが多い)という一群の物質ができます。これらは白茶、烏龍茶、プーアル茶の寝かせの中でいずれも増え、茶葉の保存期間を判断する化学的な目印とされています。

香りの組み替え:青草のような香りのアルコール類が減り、メトキシベンゼン類や木の趣を持つテルペン類が増えます。香り成分をご覧ください。

研究が語る転換点

複数の論文をまとめたレビュー研究によれば、生茶の風味の品質は保存約5〜8年ではっきり向上し、この期間は保存期間と風味の表現がおおむね正の相関を示します。ただし時間と品質は無限に直線的に上がるわけではなく、最適な「窓」があり、それを過ぎると香りも味わいも平板になることがあるといいます。これは「7〜8年でおいしくなり始める」という茶好きの経験に近いものです。個々の研究も似た時点を指しています。長年保存した7542を追跡した研究では3年目と8年目前後に成分の変化がもっともはっきりしており、0〜10年保存した生茶の香りを比べた研究では、3〜4年と10年前後にそれぞれ転換が見られました。とはいえ、お茶ごとに原料、圧しの締まり具合、保管条件が異なるので、5〜8年は研究上の参考範囲であって、一枚一枚のお茶の時刻表ではありません。飲みごろについては飲みごろをご覧ください。

温湿度が速さに影響する理由

  • 温度:化学反応は一般に温度が上がるほど速くなり、酵素や微生物も暖かさを好みます。そのため同じ湿度なら、暖かい場所のほうが寒い場所より変化が速くなります。
  • 湿度:茶葉の水分活性を決め、酵素や微生物が動けるかどうかに影響します。
  • 酸素:自動酸化には酸素が必要で、固く圧した鉄餅や、隙間なく包んだお茶は内部が触れる酸素が少なく、変化がゆっくりです。

研究は、高温多湿はお茶を「速く変える」ことはできても、品質を犠牲にすることがあるとも注意しています。同じロットの生茶を高温多湿の広東と乾燥して寒い新疆に分けて置いた研究では、広東の倉では香りが激しく変化し、新疆の倉では穏やかに変化しましたが、全体の評価は変化が速いほど良いというものではありませんでした。保管の風格の比較は乾倉と湿倉と地域ごとの倉をご覧ください。

よくある質問

プーアル茶の熟成は酸化ですか? 主にはそうですが、それだけではありません。乾燥した保存ではゆっくりした酵素によらない自動酸化と化学的な重合が中心で、湿度が高めのときは残った酵素や乾燥に強いカビも関わります。

熟成に微生物は関わっていますか? 関わっていますが、乾燥した条件ではとても静かです。茶葉の水分活性はふつう0.60以下で、微生物の多くは休眠しています。環境が湿って水分活性が約0.60を超えると、一部の保管中のカビが活動し始めます。

生茶は何年置くとはっきり変わりますか? 研究のまとめでは約5〜8年で風味がはっきり向上し、個々の研究で見られる転換点は3〜4年と8〜10年前後が多いようです。これは参考範囲で、実際は原料と保管によります。

湿った場所に置くと変化が速いのはなぜですか? 湿度によって茶葉の水分量と水分活性が上がり、酵素や微生物が活発になり、化学反応も速くなるからです。ただし変化が速いことはおいしいことと同じではなく、倉味が出ることもあります。

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