昔帰:瀾滄江のほとりの古茶園
プーアル茶の名山のなかで、昔帰は特別な存在です。ほとんどの名山は標高1,500メートル以上にありますが、昔帰の古茶園は瀾滄江のほとりにあり、標高はわずか700~950メートルほどです。
昔帰はどこにあるか
昔帰村は雲南省臨滄市臨翔区邦東郷にあり、茶園は主に村のそばの忙麓山に広がっています。忙麓山は邦東大雪山の東麓に位置して瀾滄江に面しており、朝は朝日を浴び、夕方は日陰になります。
標高は低くても良いお茶ができる
一般に、標高が高く雲や霧の多い場所で良いお茶ができやすいとされますが、昔帰は例外です。その理由は特殊な環境にあります。
- 川辺の雲霧:瀾滄江の谷は湿度が高く、川面にはよく雲や霧が立ちこめます。日光は雲霧で散乱し、茶樹に当たる光は柔らかくなります。
- 温暖な気候:谷は気温が比較的高く、茶樹の生育期間が長くなります。
- 土壌:茶園の多くは赤紅壌に小さな砂礫が混じったもので、水はけがよく、土はやや弱酸性です。地元の人はこれを「羊肝石」の土地と呼んでいます。
こうした条件によって、昔帰茶は含まれる成分が豊かで、味わいが濃厚になります。
昔帰茶の風味
- 乾いた茶葉:条索は締まっていて、色は黒くつやがある。
- 湯色:黄金色で透き通っている。
- 香り:香りが高く鋭く、蘭の香りや蜜の香りとよく表現される。
- 味わい:濃く力強く豊かで、口に含むと少し渋みがあるものの、すぐにほどける。
- 回甘と生津:回甘が速く長く続き、喉の余韻が深い。
初めて昔帰を飲んだ人の多くは、その香りと甘さに惹かれます。そして後半まで飲み進めると、厚みのある茶湯にも気づきます。
昔帰と氷島
昔帰と氷島はどちらも臨滄にあり、よく比べられます。
| 氷島 | 昔帰 | |
|---|---|---|
| 位置 | 双江県勐庫鎮 | 臨翔区邦東郷 |
| 標高 | 約1,400~2,000メートル | 約700~950メートル |
| 印象 | 甘く、柔らかく、氷砂糖の香り | 香りが高く、濃厚で、蘭の香り |
どちらも香りと甘さで知られていますが、氷島の甘さは繊細で柔らかく、昔帰の香りは高く立ち、味わいは濃いめです。飲み比べると、臨滄茶の多様さがもっともよく感じられます。
淹れ方のアドバイス
昔帰茶は味わいが濃いので、110ミリリットルの蓋碗に7~8グラム、沸騰したお湯で淹れ、最初の数煎は10秒前後で注ぎ出すとよいでしょう。渋みがはっきりしていると感じたら、浸す時間を短くすれば、香りも甘さも損なわれません。
忙麓山とその周辺
昔帰の古茶園は忙麓山に集中しています。ここの茶樹の多くは瀾滄江に面した急な斜面に生えており、古茶樹の間にはほかの木々が混じっています。茶園は大きくなく、生産量も限られています。
昔帰のある邦東郷には、ほかにも多くの茶園があり、同じく瀾滄江沿いや邦東大雪山に沿って広がっています。これらの茶園のお茶が昔帰と比べられることもありますが、本当の昔帰茶とは、忙麓山一帯の古茶園のものを指します。選ぶときは、名前よりもはっきりした出どころのほうが大切です。
昔帰茶の変化
昔帰茶は味わいが濃く、含まれる成分が豊かなので、一般に保管にとても向いていると考えられています。新茶の高い香りと甘さは、数年たつとより落ち着き、湯色は黄金色から橙黄色へと移り、口当たりはさらにまろやかで厚みのあるものになります。
昔帰を飲むリズム
- 最初の数煎:香りがもっとも高く、蘭の香りや蜜の香りがはっきりしていて、茶湯には少し渋みがあるものの、すぐにほどけます。
- 中盤:茶湯がもっとも豊かで、甘みが強く、回甘と生津がもっとも力強くなります。
- 後半:甘みが長く続き、浸す時間を延ばしてもなおおいしい味わいがあります。
昔帰の位置と環境をもう少し
昔帰村は臨滄市臨翔区邦東郷に属し、古茶園は瀾滄江西岸の忙麓山に集中しています。ここの標高はおおよそ750メートル前後で、雲南の名山の古茶園のなかでも標高がもっとも低いもののひとつです。古茶樹の樹齢の多くは200年前後で、数百年が当たり前の氷島や景邁に比べれば「若い」古茶園ですが、香りの高さと甘くまろやかな味わいで名を上げてきました。
川辺の茶園の一年
- 春:川面の水気と朝霧のおかげで茶の芽はゆっくり育ち、春茶は味わいが豊かになります。
- 夏:雨季には川の水位が上がり、気温も高く、茶樹の成長が早いため、夏茶の味わいは淡めです。
- 秋冬:乾季は日照が十分で、茶園は静まりかえり、茶樹が休む季節です。
昔帰と臨滄のお茶
昔帰と氷島は同じ臨滄にありながら、一方は瀾滄江のほとりの低い標高、もう一方は勐庫大雪山の西側の中~高標高にあります。どちらも甘さと香りが持ち味ですが、昔帰の香りはより高く立ち、味わいはより濃く、氷島の甘さはより柔らかく、茶湯はよりなめらかです。臨滄の茶樹は勐庫大葉茶などの大葉種が中心で、品種については勐庫・勐海・鳳慶:雲南の三大国家級大葉種で紹介しています。
昔帰をよりおいしく淹れるには
昔帰は香りが高く味わいが濃いので、淹れ方は次のように押さえるとよいでしょう。
| 項目 | おすすめ |
|---|---|
| 110ミリリットルの蓋碗に入れる茶葉の量 | 6~7グラム |
| 湯温 | 95~100°C |
| 潤茶 | 1回、5秒 |
| 1~3煎目 | 8~10秒 |
| 4煎目以降 | 一煎ごとに5秒延ばす |
香りの高いお茶は、注ぎ出したらすぐにふたの香りをかぎ、熱いうちに最初のひと口を飲むのがいちばんです。少しぬるくなってからもうひと口飲むと、甘さがよりはっきりします。
昔帰の名声と生産量
昔帰の古茶園の面積は大きくなく、春茶の生産量は限られています。近年は名声が高まり、価格もそれにつれて上がっています。市場には「昔帰」を名乗るお茶が少なくないので、買うときは茶園の場所と季節を確認しましょう。さらに詳しい注意点はプーアル茶を買うときの6つのポイントにあります。
昔帰と瀾滄江
瀾滄江は昔帰一帯で谷を深く刻んでおり、川面の水気が早朝に雲霧となって、川辺の茶園を包み込みます。温暖で湿潤、日差しは柔らかい。これこそ、標高の低い昔帰で良いお茶が育つ理由のひとつです。
よくある質問
昔帰と氷島では、どちらが甘いですか? どちらも甘さで知られていますが、氷島の甘さは繊細で柔らかく、昔帰の甘さは濃厚で、高く立つ香りを伴います。繊細さが好きな人は氷島を好むことが多く、香りと力強さが好きな人は昔帰に惹かれます。
なぜ標高が低くても良いお茶ができるのですか? お茶の品質は多くの条件で決まり、標高はそのひとつにすぎません。昔帰の川辺の雲霧、温暖な気候、特殊な土壌も、同じように優れたお茶を育んでいます。
昔帰の古茶樹はどれくらい古いのですか? 一般には樹齢の多くが200年前後とされ、一部の名山よりは若いものの、お茶の香りと甘さは高く評価されています。