口当たり:厚み・なめらかさ・とろみ・「水路」の細やかさ
同じように甘い一口のお茶でも、澄んだ水に砂糖を少し入れたようなものもあれば、温かい重湯のように、口に含むと重みがあってゆっくり流れていくものもあります。この違いは味ではなく質感にあり、お茶の世界では「湯感(とうかん)」、つまり口当たりと呼びます。
口当たりとは
口当たりとは、茶湯が口の中で与える触覚の感覚のことで、次のようなものを含みます。
- 厚みと薄さ:重みがあるかどうか。
- なめらかさと渋さ:飲みやすいか、こすれる感じがないか。
- とろみ:水のようか、少し粘度のある液体のようか。
- きめの細かさと粗さ:質感が繊細か、ざらついているか。
これは味とは別物です。味は甘い、苦い、渋い、うまみを語り、口当たりは質感を語ります。お茶を表現するときは両方を言うべきで、たとえば「味は甘く潤い、口当たりは厚くなめらか」のように表します。
「水路が細やか」とは
「水路(すいろ)」は、茶湯が口の中を流れていく質感を表す茶好きの言葉で、「水路が細やか」とは、茶湯がきめ細かくやわらかく、絹のように口の中をすべっていき、粒っぽさもこすれる感じもないことを指します。その反対の「水路が粗い」は、茶湯がざらついて舌をこするように感じたり、水と味が分かれているように感じられて、まとまりなく感じたりすることです。
水路が細やかなお茶は「水柔(湯がやわらか)」とも表現されます。たとえば易武一帯のお茶は、お茶の世界でよく「香揚水柔」、つまり香りが高く立ち上り茶湯がやわらかく細やかだと言われます。これは産地のスタイルについての経験的な言い方で、同じ産地でも違いがあります。
稠・黏・滑の違い
この三つの言葉はよく一緒に出てきますが、それぞれ重点が違います。
| 言葉 | 感覚 | たとえ |
|---|---|---|
| 稠(とろみ) | 茶湯に濃度と粘りがあり、流れがゆっくり | 薄い重湯、うっすらとろみをつけたもの |
| 黏(ねばり) | 茶湯が口の中や舌の表面に膜を残し、まとわりつく感じがある | 飲んだ後に唇が少しねばる |
| 滑(なめらか) | 茶湯がするすると流れ、まったく抵抗がない | あたたかな絹、ゼリーのよう |
稠と黏は「重みとまとわりつき」寄り、滑は「流れ」寄りです。よい熟茶は稠と滑を兼ね備え、「もちっとなめらか(糯滑)」「とろりとなめらか(稠滑)」とよく表現されます。よい熟成生茶は「厚くなめらか(厚滑)」とよく言われます。茶湯がねばるのになめらかでないと、くどく感じることもあります。
厚みと豊かさ
厚みとは茶湯に重みがあり、口に含むと中身が詰まっていることを、豊かさ(飽満)とはその重みが口の中のあちこちで感じられ、一点に集中しないことを指します。二つの言葉はよく入れ替えて使われますが、細かく分けるなら、厚みは重さを、豊かさは広がりを表します。その反対が「薄」で、茶湯が水のようですぐに消えてしまうこと。あるいは「空」で、口に含むと味はあるのに中ほどが空っぽなことです。詳しい用語は糯滑・順滑・飽満・薄・粗をご覧ください。
口当たりは原料と関係ある?
大きく関係しています。茶湯の厚みやとろみは、水に溶け出した物質の総量(水浸出物)や、ペクチン、多糖類などの成分に関係しています。一般的な経験としては:
- 成分の豊富な原料:葉が厚く成長の遅い原料、たとえば春茶や樹齢の高いお茶は、口当たりがたいてい厚めです。
- 季節:春茶は口当たりが豊かで、雨水茶は成長が早く、口当たりが薄めなことがよくあります。
- 製茶:揉捻が十分だと細胞がより多く壊れ、成分が出やすくなるので口当たりが厚くなります。揉捻が軽すぎると茶湯は淡めになります。
- 年数:生茶は何年も保管すると苦渋みが弱まり、口当たりがよりなめらかで、よりまろやかになることが多いです。
- 熟茶の発酵:渥堆によって一部の成分が変化し、熟茶の口当たりはとろり、もちっと、なめらかとよく表現されます。
口当たりは淹れ方とも関係する
茶葉が少なすぎれば湯は必ず薄くなり、湯温が足りなければ成分が出ず、口当たりも悪くなります。口当たりを比べたいなら、同じ茶と水の割合で淹れましょう。茶と水の割合を参考にしてください。水質も影響し、ミネラルの多すぎる硬水は口当たりをざらつかせ渋くします。詳しくはお茶を淹れる水をご覧ください。
生茶と熟茶の口当たりの違い
- 新しい生茶:口当たりはすっきりめでフレッシュさがあります。よい新茶は豊かさやとろみも感じられますが、苦渋みや香りに注意を奪われがちです。
- 熟成した生茶:苦渋みがやわらぐと口当たりが主役になり、厚く、なめらかで、まろやかな、あたたかい重湯のようだとよく表現されます。
- 熟茶:渥堆で水色が赤く濃くなり、口当たりはとろり、もちっと、なめらかとよく表現され、口に含むと丸みがあります。発酵が重すぎる熟茶は、かえって口当たりが薄く、まとまりがなくなります。
ですから口当たりを評価するときは、同じ種類どうしで比べるのが一番です。新しい生茶は新しい生茶と、熟茶は熟茶と比べましょう。
口当たりの感じ取り方
- 少しずつ飲み、口に含んで舌で軽くかき混ぜ、重さと流れを感じます。
- 白湯一口と比べます。水らしくないほど、口当たりは厚いということです。
- 飲み込んだ後の口の中を感じます。うっすらとまとわりつく感じが残っているか。
- 二つのお茶を同時に淹れて比べると、違いが最もはっきりします。
よくある質問
口当たり(湯感)とは? 茶湯が口の中で見せる質感のことで、厚みと薄さ、なめらかさと渋さ、とろみ、きめの細かさと粗さを含みます。甘い・苦いといった味とは別の面です。
「水路が細やか」とは? 茶湯がきめ細かくやわらかく、ざらついてこすれる感じがないことで、「水柔」とよく一緒に使われます。
稠・黏・滑の違いは? 稠は濃度があって流れがゆっくりなこと、黏は口の中にまとわりつく感じが残ること、滑はするすると流れてまったく抵抗がないことです。
口当たりは原料と関係ある? あります。成分の豊富な春茶、樹齢の高い原料、十分な揉捻は、たいてい口当たりを厚くします。淹れ方や水質も影響します。