手作業と機械、初製所と茶工場:プーアル茶を作るのは誰か
プーアル茶を買うとき、「純手工」「伝統の石型」「古法製作」といった言葉をよく目にします。まるで手作業なら必ず良いかのようです。実際には一枚のプーアル茶は、生葉から餅茶になるまでに何人もの手といくつもの機械を経て、いくつもの異なる事業者を通っています。
プーアル茶を作るのは誰か
プーアル茶の生産はおおむね二段階に分かれます。
| 段階 | 担い手 | 内容 |
|---|---|---|
| 一次加工 | 茶農家、初製所 | 生葉の摘採、攤晾(広げて置く)、殺青、揉捻、天日干しで晒青毛茶にする |
| 精製と成形 | 茶工場 | 篩い分け・選別、ブレンド、渥堆(熟茶)、蒸し圧し、乾燥、包装 |
茶農家
雲南の茶山の茶農家の多くは、自家の茶樹や茶園を持ち、摘採シーズンには一家総出で山に入って摘みます。伝統的には多くの茶農家が自分で殺青・揉捻・天日干しを行い、毛茶を買い付け業者や茶工場に売ってきました。
初製所
初製所は茶山にある小さな加工場で、殺青用の鍋や殺青機、揉捻機、干し場や干し小屋を備えています。村の協同組合、ある茶農家の一族、あるいは外から来た茶商が山に設けた拠点であることもあります。初製所は近隣の茶農家から生葉を買い取り、まとめて毛茶に加工するため、各家庭がばらばらに作るより品質が安定します。
つまり「毛茶を作るのは誰か」の答えは、茶農家・協同組合・初製所のいずれでもあり、初製所でまとめて処理されることがますます増えています。
茶工場
茶工場の多くは勐海、昆明、大理の下関、普洱などの町にあり、各地から毛茶を買い付けて精製・ブレンド・圧製や渥堆を行い、商品として包装します。大手の茶工場は独自の原料庫と審評の体制を持ち、自前の発酵室と圧製工場もあります。茶山で初製所と小さな圧製工場を同時に営み、生葉から製品まで一貫して作るブランドもあります。
どの工程が手作業で、どの工程が機械か
| 工程 | 手作業 | 機械 | 現状 |
|---|---|---|---|
| 摘採 | 手摘み | 機械摘み | ほとんどが手摘み |
| 殺青 | 鉄鍋での手炒り | ドラム式殺青機 | 古樹は手炒り、台地は機械が多い |
| 揉捻 | 手揉み | 揉捻機 | どちらもよく見られる |
| 乾燥 | 天日干し | 干し小屋で補助 | 天日干しが中心 |
| 選別 | 手作業での選り分け | 色彩選別機 | 手作業が今もかなり一般的 |
| 圧製 | 石型 | 油圧・空気圧のプレス機 | どちらもよく見られる |
機械のほうが安定する工程
- 殺青:ドラム機は温度や回転数を設定でき、ロットがそろいます。手炒りは職人の手の感覚次第で、ばらつきが大きくなります。
- 揉捻:機械揉捻は時間と圧力を管理でき、原料が大量でも品質が安定します。
- 圧製:機械圧の餅茶は重さ・厚さ・締まり具合が一定で、規格がそろいます。
- 乾燥(圧製後):乾燥室は温湿度を管理でき、天候に左右されません。
機械の強みは安定性と効率で、大量で規格化された製品に向いています。
手作りのお茶は必ず良いのか
そうとは限りません。手作業の強みは「柔軟性」です。職人がその日の生葉の柔らかさや水分量に合わせていつでも調整できるので、量が少なく貴重で、葉の状態が変わりやすい古樹の原料に向いています。けれども手作業には次のような面もあります。
- 品質が職人の経験や体力に左右され、同じ日でも最初の一鍋と最後の一鍋で違うことがあります。
- 手炒りでは炒りむらが出て、焦げた縁や殺青不足が生じることがあります。
- 効率が低く、コストが高くなります。
ですから、お茶の良し悪しを決めるのは、手か機械かではなく、一つひとつの工程がきちんと行われているかどうかです。殺青方法の詳しい比較は鉄鍋の手炒りとドラム式殺青で、手作業の圧製の詳細は布袋の揉み包みと石型でご紹介しています。
手作業と機械は飲んでわかるか
わかることもありますが、簡単ではありません。
- 外観:手作業の石型餅は縁が丸く、厚さに多少のばらつきがあります。機械圧の餅茶は平らで縁がシャープです。
- 条索:手揉みは条索が比較的完全で、細胞の破れ方も穏やかです。機械揉みは締まりが強く、粉がやや多いことがあります。
- 口当たり:手揉みのお茶は味の出方がゆっくりで長く続き、機械揉みのお茶は味が早く出て充実していると茶好きはよく言います。
これらの違いは原料、季節、保存の影響に覆われてしまうことが多く、ブラインドで飲んで口当たりだけで判断するのは難しいものです。
価格の違いはどこから
手作りのお茶が高いのは、人件費が高く生産量が少ないうえ、原料の多くが古樹や高等級の生葉だからです。購入するときは「手工」という二文字だけを見るより、原料の産地、摘採の季節、製造した事業者をはっきり尋ねるほうがよいでしょう。プーアル茶の価格はどう決まるかもご参照ください。
よくある質問
手作りのお茶は機械のお茶より必ず良いのですか? そうとは限りません。手作業は柔軟で貴重な原料に向き、機械は安定して効率的です。大切なのは工程がきちんと行われているかです。
初製所とは何ですか? 茶山にある小さな加工場で、近隣の茶農家の生葉をまとめて晒青毛茶にします。
毛茶を作るのは誰ですか? 茶農家、協同組合、初製所のいずれもあり、近年は初製所でまとめて加工することが多くなっています。
茶農家・初製所・茶工場の分担は? 茶農家が生葉を摘み、初製所が毛茶にし、茶工場が精製・ブレンド・渥堆・圧製・包装を担います。