茶盤・壺承・乾泡法と茶席のしつらえ
人がお茶を淹れるところを見ていると、よく二つの光景に出会います。一つは大きな木の茶盤で、湯をそのまま上からかけられるもの。もう一つは小さな布一枚、壺承(こしょう)一つ、水盂(すいう)一つで、卓上がすっきり乾いているもの。前者は伝統的な「湿泡」、後者は近年とても人気のある「乾泡」です。
茶盤は何のため?
茶盤は茶器を置き、あふれた茶湯や湯を受ける盆です。伝統的な茶盤は二重構造か排水管がついていて、器を温める湯や潤茶の湯をそのまま上に捨てると、下の受け皿やバケツに流れていきます。
よくある素材:
- 木製・竹製:あたたかみがあって美しいですが、カビや変形を防ぐため乾燥を保つよう注意が必要です。
- 石製:どっしりとして丈夫ですが、とても重いです。
- ベークライト・プラスチック:安価で丈夫、洗いやすいです。
- 陶磁器:小ぶりで、多くは壺承や小皿です。
茶盤の長所は手軽さです。湯を気軽に捨てられるので、人数が多く頻繁に器を温める場面に向いています。短所は場所を取ることと、たまった水を捨てて洗う手間があることです。
乾泡法とは
乾泡法は、大きな茶盤を使わず、卓上を乾いたまま保つ淹れ方です。
- 壺承:蓋碗や急須の下に敷く小皿で、少量のしずくを受けます。
- 水盂(建水):碗状の器で、潤茶や器を温めた湯をここに捨てます。
- 茶巾:しずくをいつでも拭き取ります。
- 茶托:茶杯一つひとつの下に敷きます。
乾泡法の長所は軽やかで片付けやすいこと。家の食卓や机、さらにはオフィスのデスクでも淹れられます。卓上がすっきりしているので、美しい茶席にもしつらえやすくなります。
茶盤がなくてもお茶は淹れられる?
もちろん淹れられます。蓋碗の下に皿を一枚、水盂代わりに碗を一つ、茶巾代わりにタオルを一枚。これが最もシンプルな乾泡の組み合わせです。多くのベテランの茶好きも、普段は布一枚、蓋碗一つ、ピッチャー一つで淹れています。
茶巾の使い方
茶巾はお茶を淹れるときに手元に置く小さな布で、茶器の外側や卓上のしずくを拭くためのものです。カップの口の内側を拭くものではありません。
- 置く場所:淹れる人の手元、すぐ手に取れるところ。
- たたみ方:長方形にたたみ、折り山を自分側に向けるのが一般的。使うときは取り上げて軽く押し当て、水を吸わせます。
- 拭くもの:蓋碗や急須の底(しずくが垂れないように)、ピッチャーの外側、卓上の水跡。
- 素材:綿や麻。吸水性がよく、毛羽が出にくいもの。
- お手入れ:使ったら洗って干しましょう。湿ったまま置くとカビが生えやすくなります。
茶席とは
茶席とは、お茶を淹れるひとまとまりの空間のことです。卓上、茶器、布、花、器物のしつらえ、そしてお茶を淹れる人と飲む人。改まったものにも、ごく日常的なものにもなります。大切なのは、淹れる人にとって使いやすく、飲む人が心地よく感じられることです。
茶席の並べ方
- まず主となる淹れ器を決める:蓋碗か急須を、淹れる人の正面の一番使いやすい位置に。
- 利き手側に湯を:湯沸かしは利き手の側(右利きなら右側)に置き、ほかの道具をまたがずに注げるようにします。
- ピッチャーは淹れ器の近くに:注ぎ出す動線が短く、しずくが垂れにくくなります。
- 茶杯は向かい側に並べる:飲む人の近くに置けば、お茶を注ぐときに手を伸ばしすぎずに済みます。
- 水盂と茶巾は手元に:いつでも使えるように。
- 茶葉と茶荷は片側に:茶葉を入れる前に、お客様に乾いた茶葉を見てもらいます。
- 敷き布を一枚:落ち着いた色の布で、茶器をひとまとまりに見せます。
原則は、動線は短く、手を交差させず、物は少なく整然と、です。
花や香を添えてもいい?
- 花:添えて構いません。季節の花や枝葉を一枝で十分です。香りの淡いものを選び、香りの強い花でお茶の香りを邪魔しないように。花器は高すぎないものにして、視線をさえぎらないようにしましょう。
- お香:慎重に。線香やアロマの香りはお茶の香りを簡単に覆ってしまいます。特に新茶を味わったり飲み比べたりするときは要注意です。どうしても焚きたいなら、茶席から離れた風通しのよい場所に置くか、お茶の前後に焚いて、飲むときには消しましょう。
- 音楽・照明:やわらかな照明、静かな音楽は、茶席をより心地よくしてくれます。
お茶の作法についてはお茶の作法をご覧ください。
一人の席、二人の席、大人数の席
- 一人の席:蓋碗一つ、ピッチャー一つ、杯一つ、水盂一つ、小さな布一枚で、立派な茶席になります。
- 二人の席:向かい合うか並んで座り、杯はそれぞれ一つ。茶器は二人の間の、淹れる人寄りに置きます。
- 大人数の席:淹れる人が主の席に座り、杯を一列か弧を描くように並べると、ピッチャーを回しやすくなります。人数が多いときはピッチャーを二つ用意してもよいでしょう。
よくある質問
茶盤は何のため? 茶器を置き、あふれた湯を受けるためのものです。器を温めた湯や潤茶の湯をそのまま上に捨てられます。
乾泡法とは? 大きな茶盤を使わず、壺承、水盂、茶巾で卓上を乾いたまま保つ淹れ方で、軽やかで片付けやすいのが特長です。
茶盤がなくてもお茶は淹れられる? 淹れられます。皿一枚、水盂代わりの碗一つ、茶巾代わりのタオル一枚で乾泡ができます。
茶席の並べ方は? 淹れ器は正面、湯沸かしは利き手側、ピッチャーは淹れ器の近く、杯はお客様側に。動線は短く、物は少なく。
花や香を添えてもいい? 香りの淡い花を一枝添えるのはとてもよいです。お香はお茶の香りを覆いやすいので、離して置くか、飲むときには消しましょう。