お茶の作法:お茶を出す・指で卓をたたく・七分目
お茶を飲むのは気楽なことですが、主人と客がいれば、自然と作法が生まれます。こうした作法は人を縛るためのものではなく、みんなが心地よく飲み、互いを尊重するためのものです。多くの習慣の裏には、とても実際的な理由もあります。
お茶はなぜ七分目まで注ぐのか
中華圏には「酒は満たして人を敬い、茶は満たして人を欺く」という言葉があります。お酒はなみなみと注げば敬意を表すけれど、お茶をなみなみと注ぐのは礼を欠く、という意味です。なぜでしょうか。
- やけどを防ぐ:お茶は熱いので、注ぎすぎると客が杯を持つときにこぼれて、手をやけどしやすくなります。
- 持ちやすい:少し余裕を残せば、指で杯の縁を持てて、熱い茶湯に触れません。
- 香りを残す:杯の口に余裕があれば香りが杯の中に集まり、飲む前に香りを楽しめます。
- 情を残す:「お茶は七分、情は三分」と言われるように、残した三分は情誼のための余白です。
七分というのはおおよその目安で、実際には杯の七、八分目まで注げば十分です。小さな茶杯でプーアル茶を飲むなら、二、三口で飲み切れるくらいに注ぐと、温度も香りも最もよい状態で味わえます。
お茶を出す順番
お茶を出す基本の原則は「客が先、主人は後。年長が先、年少は後」です。
- 客が先、主人は後:主人はお茶を淹れたら、まず客に出し、自分は最後にします。
- 客の中では年長者・目上の人が先:客に長幼の別があれば、年長者や身分の高い人に先に出します。
- 同輩なら座席の順に:一般には主賓から始め、時計回りか座席の順に出します。
- ピッチャーで分ける:ピッチャー(公道杯)で茶湯を各杯に分ければ濃さがそろい、それから順に出します。ピッチャーの使い方はピッチャー(公道杯)・茶こし・茶杯をご覧ください。
主人のお茶の出し方
- 両手で差し出す:両手で杯を持つか、茶托ごと持って出し、敬意を表します。
- 取っ手は客が持ちやすい向きに:取っ手のある杯なら、取っ手を客の右手側に向けます。
- 杯の口に手を触れない:杯の下半分か茶托を持ちます。杯の口は客が口をつけるところです。
- ほどよく注ぎ足す:客の杯が空きそうになったら注ぎ、何度も飲むよう急かさないようにします。
- 注ぎ口を人に向けない:急須を置くときは、注ぎ口を客に正面から向けないようにします。民間では失礼にあたるとされています。
叩指礼とは
叩指礼(こうしれい)は客が感謝を表す動作です。主人がお茶を注いでくれたとき、客は指でテーブルを軽く何回かたたき、「ありがとう」の代わりにします。広東、香港、台湾の茶楼や茶卓ではよく見られる光景です。
叩指礼の由来
最もよく聞くのは一つの伝説です。清代の乾隆帝がお忍びで江南を旅したとき、茶館で自らお供にお茶を注ぎました。お供は恐れ多さに、ひざまずいて礼を言おうとしましたが、皇帝の身分がばれるのを恐れ、指を曲げてテーブルを軽くたたき、ひざまずいて頭を下げる仕草をまねました。のちにこの動作が広まり、お茶を飲むときに感謝を表す作法になった、というものです。これは民間に伝わる物語で、史実とは限りませんが、叩指礼に面白みを添えています。
指のたたき方
よくある分け方は次のとおりです。
| 場面 | やり方 | 意味 |
|---|---|---|
| 年少者から年長者へ | 五本の指をそろえて拳にし、指の背でテーブルを 3 回軽くたたく | 頭を下げて敬意を表すのに相当 |
| 同輩どうし | 人差し指と中指をそろえ、テーブルを 3 回軽くたたく | 拱手してお礼を言うのに相当 |
| 年長者から年少者へ | 人差し指か中指で 1 回軽くたたく | うなずいてあいさつするのに相当 |
地域によって習慣は違い、これはよくある一つの形にすぎません。普段お茶を飲むときは、人差し指と中指で二、三回軽くたたけば、感謝の気持ちは相手に伝わります。
客のお礼の返し方
- 指で卓をたたく:主人がお茶を注いでくれたら、テーブルを軽くたたいてお礼をします。
- 両手で杯を受け取る:主人から直接手渡されたら、両手で受け取ります。
- まず香りを聞いてから飲む:杯を手に取ったら、まず香りを確かめてから少しずつ飲み、味わっていることを表します。
- 感じたことを伝える:飲み終わったら、「とても甘いですね」「香りがいいですね」など、気に入ったところを伝えると、主人はとても喜びます。
- もう飲みたくないときは:杯のお茶を飲み干して、杯を伏せるか脇に寄せる、あるいは主人に直接「もう十分です、ありがとうございます」と伝えます。地域によって習慣が違うので、言葉で伝えるのが一番はっきりします。
- あら探しをしない:口に合わなくても、その場で批判する必要はありません。
茶卓での小さな心づかい
- 指で杯の中をかき混ぜたり、お茶に指を浸けたりしない。
- 大きな音を立ててすすらない。評茶師は「啜茶(すすって味わう)」をしますが、普通の茶卓では少しずつ飲めば十分です。
- スマートフォンはマナーモードにして、お茶とおしゃべりに集中する。
- 濃すぎる香水はつけず、みんなが香りを楽しむ邪魔をしない。
- 帰るときは、主人にお茶のお礼を言う。
オフィスや家族どうしでお茶を飲むなら、作法はもっと気楽で構いません。大切なのは互いへの気づかいで、たとえば先に相手に濃いめがいいか薄めがいいかを聞く、といったことです。オフィスでのやり方はオフィスでプーアル茶をを、お茶を淹れる道具は茶器入門をご覧ください。
よくある質問
叩指礼とは? 主人がお茶を注いでくれたとき、客が指でテーブルを軽くたたいて感謝を表すものです。乾隆帝のお忍びの江南旅行にまつわる民間伝説が由来だとよく言われます。
お茶はなぜ七分目まで注ぐ? こぼれてやけどするのを防ぎ、杯を持ちやすくし、香りを杯の中に集めるためで、「お茶は七分、情は三分」という言い方もあります。
お茶を出す順番は? 客が先で主人は後、年長が先で年少は後。同輩なら座席の順に、ピッチャーで分けて濃さをそろえます。
客のお礼の返し方は? 主人がお茶を注いでくれたら指で卓をたたいてお礼をし、両手で杯を受け取り、香りを聞いてから飲み、飲み終わったら感じたことを伝えます。