湯の注ぎ方:一点注ぎ、回し注ぎ、高く注いで低く出す
お茶を淹れる所作の中で、いちばん見落とされがちなのが湯の注ぎ方です。同じお茶でも、湯が茶葉に当たるか、碗の内側を伝って流れるか、湯柱が太いか細いか、高いか低いかで、茶湯の口当たりに少しずつ違いが出ます。違いは大きくはありませんが、苦渋みのはっきりした若い生茶や、固く圧された龍珠ではよくわかります。
湯は茶葉に当てるべきか
お茶によって決めます。
- 開かせたいお茶は茶葉に当てる:龍珠、鉄餅から崩した塊、老茶頭は、熱湯を直接作用させないとほぐれないので、洗茶と最初の1〜2煎は茶の塊を狙って注いでかまいません。
- 苦くなりやすいお茶は茶葉を避ける:若い生茶や柔らかい芽茶は、湯が茶葉に直接当たると苦渋みが早く多く出るので、碗の縁に沿って注ぎ、湯が回り込んでから茶葉に浸るようにします。
いくつかの注ぎ方
一点注ぎ(定点注水)
湯柱を一点に固定して落とします。ふつうは茶葉の山の中央かどちらか一方です。熱が集中するので、固く圧したお茶や熟茶に向いており、茶の塊に水を吸わせてほぐします。
縁に沿って注ぐ
湯を蓋碗や急須の内壁に沿って流し、茶葉に直接当てないので、茶湯は比較的柔らかくなります。若い生茶や柔らかい生茶にいちばん向いています。
回し注ぎ(環注)
湯柱を碗の内壁に沿って一周、あるいは数周回し、茶葉に均一に熱湯を当てます。水面に浮いた細かい泡を端に寄せることもできます。散茶や、茶葉が広く敷かれているときに向いています。
高く注ぐ・低く注ぐ
- 高く注ぐ(高沖):ケトルの注ぎ口を蓋碗から高めに離し、勢いのある湯柱で茶葉を碗の中で躍らせます。味が早く出て、香りが立ちのぼります。熟茶、古いお茶、開かせたいお茶に向いています。
- 低く注ぐ(低沖):注ぎ口を碗の口に近づけ、穏やかな流れにします。茶葉はあまり動かず、茶湯は柔らかくなります。若い生茶や柔らかい芽茶に向いています。
高く注いで低く出す
茶の世界ではよく「高沖低斟(高く注いで低く出す)」と言います。湯を注ぐときは高めにして茶葉を動かし、お茶を注ぎ出すときは低めにして、注ぎ口や蓋碗の口を茶海に近づけ、茶湯がはねたり泡立ったりせず、香りも逃げにくいようにするのです。この言葉は注湯と注ぎ出しという二つの動作のことで、同じ一つの動作ではありません。
湯柱の太さ
- 太い湯柱:注ぐのが早く温度も高いので、沸騰した湯で熟茶や古いお茶を淹れるのに向いています。
- 細い湯柱:注ぐのがゆっくりで、湯が空中を長く通るぶん温度が少し下がるので、若い生茶を柔らかくしたいときに向いています。細口のドリップケトルなら、いちばん細い湯柱をコントロールしやすくなります。
坐杯とは
「坐杯(ざはい)」とは、湯を注いだ後、お茶を蓋碗や急須の中にしばらくとどめてから注ぎ出すこと、つまり浸す時間のことです。茶好きが「坐杯10秒」と言えば、湯を満たしてから10秒待って注ぎ出すという意味です。坐杯が長いほど茶湯は濃くなります。龍珠の最初の数煎や、古いお茶の後半には長めの坐杯が必要で、若い生茶の最初の数煎はほとんど坐杯せず、満たしたらすぐに注ぎ出します。秒数のリズムは注ぎ出しの時間をご覧ください。
注ぐ量
蓋碗は縁の下指一本分くらいまで注げば十分です。満たしすぎると注ぎ出すときにあふれて手をやけどしやすく、蓋も安定しません。紫砂の急須はいっぱいまで注ぎ、蓋をするときに湯が少しあふれるようにして、表面の泡を流し去ってかまいません。
若い生茶の注ぎ方の手本
- 器を温めてから茶葉を入れ、蓋をして軽く振り、乾いた茶葉の香りを聞きます。
- 洗茶:縁に沿って注ぎ、5秒で捨てます。
- 1〜3煎目:低く、縁に沿って、細めの湯柱で注ぎ、坐杯5〜10秒。
- 4煎目以降:茶葉のそばに一点注ぎに切り替え、湯柱をやや太くし、坐杯を一煎ごとに長くしていきます。
熟茶の注ぎ方の手本
- 器と急須を温め、茶葉を入れます。
- 洗茶:高く、一点注ぎで注ぎ、5秒で捨て、1〜2回繰り返します。
- 以降の各煎:高く注ぎ、ぐるりと一周回し注いで茶葉を動かし、坐杯10〜15秒から始めます。
何で湯を注ぐか
- 一般的な電気ケトル:注ぎ口が太く湯柱も大きいので、高く注ぐ・一点注ぎに向いており、熟茶や古いお茶を淹れるのに便利です。
- 細口のドリップケトル:湯柱が細く、方向や勢いをコントロールしやすいので、若い生茶や柔らかい芽茶を淹れるときに特に使いやすいです。
- 鉄瓶・陶器のポット:本体が重いので、注ぐときは手首を安定させ、湯柱を急にしすぎないこと。
どのケトルが良い悪いということはありません。大切なのは自分の手元の一つに慣れ、その湯柱の太さと出る速さを知ることです。湯沸かしの選び方は湯沸かしにあります。
注ぎ方の小さな練習
真水で練習するのがいちばん気楽です。蓋碗に茶葉を一つまみ入れ、縁に沿って、一点で、回しながら、とそれぞれ試して、茶葉の動き方を見てみましょう。さらに同じお茶を同じ時間でそれぞれ一杯ずつ淹れて並べて飲むと、違いが思ったよりはっきりわかります。
よくある質問
湯は茶葉に当てて注ぐべきですか? 開かせたい固く圧したお茶や熟茶は、茶葉に一点注ぎで当ててかまいません。苦くなりやすい若い生茶は碗の縁に沿って注ぎます。
回し注ぎと一点注ぎの違いは? 一点注ぎは熱が集中し、茶の塊をほぐすのを助けます。回し注ぎは茶葉を均一に温め、泡を端に寄せることもできます。
高く注ぐのと低く注ぐのとでは何が違いますか? 高く注ぐと湯柱に勢いがあり、茶葉が動いて味が早く出ます。低く注ぐと流れが穏やかで茶湯が柔らかくなり、若い生茶に向いています。
坐杯とはどういう意味ですか? 湯を注いだ後、お茶を碗の中にとどめて浸しておく時間のことで、「坐杯10秒」は10秒待ってから注ぎ出すという意味です。